他人事ではない、介護離職をご存じですか?(2021年夏号)

みなさまは介護離職という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
介護離職とは、家族を介護するために労働者が仕事を辞めることを言います。
今回は介護離職を考える際の注意点などについてお伝えしていきたいと思います。
ご家族や友人、職場の同僚の方々と一緒に考えてみましょう。

介護離職の現状

厚生労働省の調査※によると2019年に介護・看護による離職をした人は約10万人となっています。離職者全体の離職理由をみていくと「一身上の都合」という個人的な理由で離職される方が多いので、これらの数字は氷山の一角で潜在的にはもっと多くの介護離職者がいると思われます。
また介護離職者10万人の内訳を性別でみると、男性は約2万人、女性は約8万人で、現状では女性が介護を担う傾向が多いですが、少子化や家族構成の変化、働き方の変革などの理由で男性が介護を担うケースが今後は増えてくると予想されます。

介護離職を考える前に

介護離職は、じっくり落ち着いて介護に専念する時間を多く捻出できるため、ご家族や大切な人と向き合って、たくさんの時間を過ごすことができます。また、ご自身で介護を行うことで、介護に後悔を残さず出来る限りのことをして差し上げることができます。
一方、責任感の強い方は自分がやらなければという使命感で介護離職を選ばざるを得ない状況に陥りがちのようです。後悔しないためにも介護離職のマイナス面も確認しましょう。
介護離職を考える上での注意点は経済的な損失です。仕事を辞めることにより大きな収入源を失ってしまうことになるため、日常生活で使えるお金が減ってしまう、あるいは貯蓄を取り崩すなど、金銭的な負担が大きくなることです。また自分の公的年金の受給額が減少したり、職場復帰が困難になったり、社会とのつながりが減少するなどの介護離職後の気づきにくい損失があることも視野に入れる必要がありそうです。

一人で悩まないで

介護離職での注意点は自分一人で立ち向かってしまうことです。
介護は個人だけの問題ではなく、地域社会の問題でもあるので、社会での解決策をみつけることが大事です。決して孤立してはいけません。相談先を見つけることです。
離職を考える前にお勤めの会社の制度を確認してみるのも良いかもしれません。職場の上司や同僚に相談してみてください。介護と仕事の両立を図るための公的制度として介護休暇制度や介護休業制度が整備され、介護か仕事かの二者択一構造の解消の一助になっています。
お住まいのお近くにある地域包括支援センターでは、介護についての総合的な相談を受けつけていますので、情報の収集や早期の相談など気軽に活用してみましょう。
また介護を見据えたライフプランを早めに立てて、現状を把握し、今後の選択肢を多くみつけることも大切です。
介護にかかわらず家計のご相談をされたい方はこの機会にFP個別相談をご検討ください。
※出典:厚生労働省「2019年雇用動向調査」