生前贈与(2023年夏号)

みなさま、こんにちは。

今回のコラムでは「生前贈与」についてお話してみたいと思います。

ある方がお亡くなりになった場合、ご家族が財産を引き継ぐことを一般に相続と呼びますが、お亡くなりになる前にご家族へ財産を引き継ぐことを生前贈与といいます。この贈与にはどのような効果があるのでしょうか。今回は生前贈与の効果と注意点、そして税制の改正について考えてみたいと思います。

生前贈与の効果

さて生前贈与とはどのような場合に行われるのでしょうか。

大きく2つ考えられます。一つは相続税対策です。将来相続税がかかる見込みのある方にとって、生前贈与をすることで相続税の課税対象となる資産額を減らしていくことは一つの節税対策となります。

また資産を早めにご家族へ渡したいというご家族への支援ニーズです。例えばお子様が住宅を購入する際の頭金の援助やお孫様の教育資金を負担してあげたいなどがあります。

贈与税について

贈与を行う場合に考慮すべきことの一つが贈与税です。
贈与可能な金額には上限がありませんので、1億円でも10億円でも贈与を行うことは可能ですが、その年に受け取った贈与の合計額が基礎控除の110万円を超えた場合には贈与税という税金がかかります。(ちなみに贈与税は「あげた人」ではなく「もらった人」が払う税金です。)

贈与の相続税加算期間の延長

年間110万円までは税控除される、つまり非課税で贈与を受けることが出来るわけですが、生前贈与をした方に相続が発生した場合には、過去3年分についての贈与は、相続財産に持ち戻され、相続税の課税対象になります(亡くなる前(3年以内)に駆け込みで贈与をして相続財産を少なくしても、それは認めませんよというルールです)これを生前贈与の相続加算期間と言うのですが、令和5年の税制改正により、3年から7年へ変更となりました。

令和6年1月1日以後の贈与により取得した財産が対象になりますが、令和5年の贈与は生前贈与加算期間7年の対象外になるため、これにより年内の贈与を考える人が増えるかもしれませんし、資産のある方にとっては、早めに贈与を開始したほうが税金面ではよい場合が多いと思われます。

生前贈与対策は計画的に

本コラムでは毎年贈与を行う(暦年贈与とよばれる)方法を紹介しました。

他にも生前贈与分を相続時に課税する相続時精算課税という制度もあります。令和5年の税制改正では相続時精算課税制度の見直しがあり、これまでの実務面での煩雑さが是正され利用しやすくなっています。

相続や贈与については、資産規模や家族構成、目的などにより最適な対応が異なりますので詳しく知りたい方は専門家へのご相談をおすすめします。